ニュースの概要
バルセロナ市では、住民組織を対象に、集合住宅の屋上で庭園や太陽光発電を整える計画へ最大6万ユーロ(日本円で1,000万円ほど)を助成する制度が進んでいる。対象は都市型の菜園、緑化スペース、ソーラーパネルを組み合わせた計画だ。使われていない屋上を、食料づくり、再生可能エネルギー、住民の交流の場へ変えることがねらいである。一方で、専門家からは慎重な声も出ている。植物を置いただけでは、建物全体の環境性能は分からない。断熱、エネルギー消費、維持管理、そして誰もが使える設計まで含めて見なければ、緑化の成果は測れないという指摘である。
引用元: バルセロナ、屋上庭園と太陽光発電に最大6万ユーロを助成(Russpain)
分析・見解
屋上を「緑の飾り」で終わらせない発想の転換
この制度で面白いのは、緑化と発電と菜園を別々に扱わず、一つの屋上計画として束ねている点だ。屋上は日当たりが良く、地上の用地も取らない。都市では貴重な空き地である。ただし、土を載せるのか、パネルを並べるのか、人が歩くのかで、必要な条件は大きく変わる。
専門家の指摘は、まさにここに向いている。植物が元気に育っていても、その下の天井が熱を通しやすければ、冷暖房の負担は減らない。見た目の緑と、建物の実力は別の話である。屋上の緑は断熱改修の代わりではなく、上乗せとして考えるべきだ。
太陽光と菜園は、場所の取り合いになりやすい
技術面で最初にぶつかるのは、面積の奪い合いだ。太陽光パネルは影を嫌う。一方、野菜は日光を欲しがる。パネルの下で作物を育てる方法(=営農型の考え方)もあるが、集合住宅の屋上では、風、重さ、水の流れも考える必要がある。
土を入れた菜園は、水を含むと思いのほか重くなる。構造に余裕のない古い建物では、補強費がかさむ。6万ユーロは大きな額に見える。しかし、防水のやり直し、手すり、排水、パネルの設置を重ねると、余裕は意外に少ない。さらに、作った電気を共用部だけで使うのか、各戸へ分けるのかも決めなければならない。ここが曖昧だと、住民の間に不公平感が生まれる。
欧州の先行例が示す「植えた後」の落とし穴
屋上緑化は、パリやロンドンなどでも広がってきた。パリは「パリキュルチュール」という都市農業の計画で、屋上などの活用を呼びかけてきた。こうした先行例で繰り返し出る課題は、設置後の管理である。
水やりの仕組みが壊れる。世話をしていた住民が引っ越す。パネルの掃除が止まる。そうした小さな停止が、数年後の荒れた屋上につながる。助成金は初期費用に向きやすい。しかし本当に費用がかさむのは、十年目以降である。
「誰もが使える」まで入れると評価が変わる
見落とされがちなのが、使いやすさの条件だ。エレベーターが屋上まで届かない建物では、車いすの人や足の弱い高齢者は庭に入れない。階段だけの屋上では、共有の場と言っても、一部の人の場所になってしまう。
そこで、審査では三つの数字を並べるとよい。年間の発電量、夏と冬の室温の差、利用者の人数と顔ぶれである。緑の面積だけを成果にすると、写真映えする計画が有利になる。数字を追う制度なら、地味でも断熱改修を含む計画が評価される。ここがこの助成の本当の分かれ目だと考える。
ビジネスへの影響
管理組合や不動産会社が先に決めたい三つの条件
日本でも、マンションの屋上は未利用のままになりがちだ。同様の計画を考えるなら、まず三つを決めたい。屋根の防水の寿命、構造にどれだけ余裕があるか、そして維持管理を誰が担うかである。
防水工事の時期と重ねて計画すれば、足場や撤去の費用を二重に払わずに済む。屋上を一度はがす工事は、緑化や太陽光を載せる最も安い機会でもある。
管理の担い手は、住民ボランティアだけに頼らない。年間契約で庭の手入れと点検を外部へ任せ、費用は修繕積立金や利用料でまかなう設計が現実的だ。
工務店と設備会社は見た目より測れる数字で提案する
施工側にとっては、緑化と太陽光と断熱をまとめて提案できる点が強みになる。提案書には、緑の面積だけでなく、年間の発電量、屋上直下の部屋の夏の室温、散水に使う水の量を入れたい。
導入の前後に温度計と電力量計で数か月測るだけでも、説得力は大きく違う。数字があれば、補助金の申請にも、将来の売却時の説明にも使える。
日本で応用するなら補助制度を広めに読む
日本には、国や自治体の太陽光、省エネ改修、緑化の補助制度がある。ただし、制度ごとに対象や期限が違う。一つの計画に複数を当てはめられるかは、申請前に自治体へ確認が必要だ。
最後に、誰もが入れる動線を最初から設計に入れる。後から段差を直すより、はるかに安く済む。