ニュースの概要
中国江西省の上饒市で、使用済みの太陽光パネルを再資源化する施設の計画が公表された。事業主体は江西鳳銀新能源で、投資額は6,000万元、処理能力は年間30万トンを見込む。現在は環境影響評価の情報を公開している段階で、着工はまだである。太陽光発電の設置量が急増した結果、将来は大量の廃棄パネルが出る見通しが強まっており、計画はその受け皿を先に用意する動きと位置づけられる。製造、利用、再資源化を一つの流れにつなぐ狙いが示されている。ただし公表されたのは計画段階の数字であり、実際の稼働時期や回収の仕組みはまだ明らかになっていない。
引用元: 中国江西省、廃太陽光パネルを年間30万トン処理するリサイクル計画を公表(Solar Now / TaiyangNews)
分析・見解
処理量を枚数に直すと、計画の大きさが見えてくる
1枚約20キロで概算すると、30万トンは約1,500万枚分になる。出力に直せば、数ギガワット級のパネルが対象になる計算だ(筆者の概算)。一方、投資額の6,000万元は日本円で十数億円規模にとどまる。年間処理量1トン当たりの設備費は、日本円で数千円ほどにすぎない。
この軽さから、高度な精製設備を一気にそろえるのではなく、破砕や選別などの前処理を中心にした計画と読むのが自然だ。段階的に拡張する可能性もあるが、詳細は公表されていない。筆者はここに、パネル廃棄を「ごみ処理」ではなく「資材の回収事業」として組み立て直す意図を見る。
重さの大半はガラスで、利益は少量の金属に集まる
パネルは重さの約7割がガラス、1割強がアルミ枠である。日本の住宅用パネルでも、構成はおおむね同じだ。価値の高い銀や銅、高純度シリコンは、ごく少量しか入っていない。つまり、トン単位で処理しても、ガラスとアルミだけでは採算が取りにくい。事業の成否は、銀やシリコンをどこまで取り出せるかで決まる。
ここで見逃せないのが、回収費を誰が負担するかである。EUではWEEE指令(=電気電子機器の回収ルール)により、パネルも製造側の責任で回収・処理する枠組みがある。費用の出どころが決まって初めて、処理業者に原料が集まる。中国の新施設も、同じ問いから逃れられない。
計画が先行する理由は、廃棄のピークが十年後に来るから
中国は過去十数年で、世界最大の導入国になった。寿命を25〜30年とみれば、本格的な退役の波は2030年代以降に来る。日本でも2012年の固定価格買取制度の開始後に設置が急増しており、同じ時間軸で廃棄が増えていく。今から施設を用意するのは、その山に間に合わせるためだ。
ただし、廃棄は寿命を迎えてからだけ出るわけではない。輸送中の破損、災害、不良品に加え、古いパネルを高効率品に替える入れ替え(=リパワリング)が進めば、寿命前でも廃棄が前倒しで発生する。受け皿の整備は、すでに必要な段階にある。
着工前の段階で、数字をどこまで信じてよいか
計画はまだ環境影響評価の公開段階で、着工していない。計画が公表されても、稼働まで時間がかかったり、規模が変わったりする例は珍しくない。数字は目標値として受け止めたい。
それより注目したいのは、回収網と販路である。誰がどこから使用済みパネルを運び、取り出したガラスや金属を誰が買うのか。ここが見えない限り、施設ができても稼働率は上がらない。施設の数字より、この二点の続報が計画の本気度を映す。
ビジネスへの影響
設置する側は、撤去と処分の費用を先に見込む
太陽光を持つ事業者にとって、廃棄は二十年先の話ではなくなりつつある。まず、設置年、型番、枚数、メーカーを台帳にまとめておきたい。これがあれば、将来の処分見積もりも、再利用できるかの判断も早い。点検で見つかった不具合パネルも、廃棄の第一波になりうる。日本では2022年7月から、10キロワット以上の事業用発電を対象に、廃棄費用の積立が制度化された。対象外の小規模設備や自家用設備は、自分で費用を用意する必要がある。
処分を頼む先は、産業廃棄物の許可を持つ業者に限る。割れたパネルは感電や有害物の心配があるため、自分で解体せず、雨が当たらない場所に保管する。
中国の動きから、調達と提携の機会を読む
中国で処理能力が増えれば、回収したガラスや金属の再生材が、国際市場に出回る可能性がある。再生材の価格や品質が安定すれば、パネルの製造コストや将来の処分費にも影響する。購入する側は、価格だけでなく、メーカーが回収に協力するか、含有物質の情報を出すかを比べるとよい。
また、国内で回収・選別に強みを持つ事業者にとっては、技術提携や再生材の販売先づくりが事業機会になる。ただし、今回の数字は計画段階である。確定情報が出るまでは、契約や投資の前提に置かず、動向を追う材料にとどめるのが現実的だ。
契約書に入れたい一行と、見直しの時期
新設や更新の契約では、撤去費の負担者、回収の窓口、再利用の可否を一行でも書いておく。数年後に事業を売る場合も、この記載が資産の説明力を高める。年に一度の点検時に、台帳と契約を見直す習慣をつけたい。